他人の星

déraciné

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(4)―「僕たちの、失敗」

「何十日も仕事して、その持久戦に耐えていくあれがなくなって。だからしんどくなってきて。あの状態で生きていこう思ったら、誰か他人でも親戚でもね、僕がその時点でも思っとったんやけど、十二万円の障害年金渡すから、上げ膳据え膳でずっと一つの部屋に…

夜ごとの 訪問者

「ねぇ きみ」 僕は この声に 慣れている この声を 知っている 夜ごと あらわれる 轢死した という 男の 声だ 「あの 遮断機も 警報機も 人を 電車から 守るためのものじゃない です」 また そこから 話すか と 思いつつ 僕は 布団の上で 身じろぎもしない …

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(3)―「彼女が農作業着に着替えたら」

アヤナミが、農作業着なんか着ちゃったら、おしまいですよ、そりゃ。 水着なら、ともかくも………。 (綾波には、やっぱり白が……) 新しい“自然”—都市型無秩序 繰り返しになりますが、私がウルトラマンや、ウルトラセブンに感じていた郷愁がいったい何だったの…

遺書

遺書を書いて それから つかの間 この世に 顔を出して 振り返れば 水が一滴 落ちる間 くらいに とても 短く けれども あの太陽に じりじりと 照りつけられれば 永遠のように 長く 雨の夜には 雨音が こっちへ こっちへと とても 易しく 道筋を つけるから と…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2)—「大人になんか、なりたくないよ」

「大人というものは侘しいものだ。愛し合っていても、用心して、他人行儀を守らなければならぬ。……見事に裏切られて、赤恥をかいた事が多すぎたからである。人は、あてにならない、という発見は、青年の大人に移行する第一課である。大人とは、裏切られた青…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(1)―「あの日の夢を、花束にして」

「人間同士の信頼感を利用するとは、恐ろしい宇宙人です。でもご安心ください、このお話は遠い遠い未来の物語なのです。え?何故ですって?我々人類は今、宇宙人に狙われるほどお互いを信頼してはいませんから」 ―『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」 「…

『パラサイト 半地下の家族』(4)―どっちが“パラサイト”?―

「平和」はいつも犠牲者の屍の上に 私は、子どもの頃からウルトラマンが大好きで、特撮シリーズに夢中になったまま、大きくなりました。 中でも、今でも見るたびに、どうしても涙が出てしまう作品があります。 それは、『ウルトラマン』の第23話「故郷は地球…

機械 ノ 涙

ずっと ずっと 雨 だった ような 気がする ずっと ずっと 晴れ だった ような 気がする いまは ただ 風が吹いている 死にものぐるいで やすらぎを 探すのに そんなものは どこにもない 水を打ち 波を立て 木の幹を 引き裂いて 泣き叫び どこまでも どこまで…

『パラサイト 半地下の家族』(3)―「悪」もなく「善」もなく―

ここからは、大いにネタバレを含みますので、ご注意ください。 さて、めでたくパク家に全員が職を得たキム家は、パク一家が息子ダソンの誕生祝いのキャンプに出かけたのをいいことに、パク邸の居間を占拠し、酒盛りを始めます。 そして、この夜、予期せぬ事…

2月の空

「すみません」 という 言葉を その場しのぎの 言い逃れ みたいに 何度も 何度も 言っている うちに いつしか 何の 味も しなくなる 「すみません」 すみません って 何だっけ 「ありがとう」 という 言葉を 背筋に 寒気がはしるほど ほんとうは 言いたくも …

『パラサイト 半地下の家族』(2)―自立?-

「めしを食べなければ死ぬ、という言葉は、自分の耳には、ただイヤなおどかしとしか聞えませんでした。その迷信は、(いまでも自分には、なんだか迷信のように思われてならないのですが)しかし、いつも自分に不安と恐怖を与えました。人間は、めしを食べな…

鉛の兵隊

光から わが身を 隠さんがため 迷彩服 着た すれっからし 指で 空を 四角く 囲う だだっぴろい 空 など 無用の長物 腹いせに 高く うつろな 尖塔を いくつも いくつも 空へ 突き刺す まるで 太陽でも 砕ける ような 轟音 爆音 鳴らせば 天地を 支配した よう…

『パラサイト 半地下の家族』(1)ー人間の価値?ー

ワインの価値は 「つまり、人間はラベルなんだよ。一流のビンテージなら、一流の人間に飲まれ、安いビンテージなら、安い人間にしか相手にされない」 「そうかな。たとえこれが1000円の安いワインだったとしても、12万円だって言われたら、みんな、ありがた…

bus stop

ぼくは ひとり 誰も 乗っていない 深夜のバスに ゆられている 雨や 風に さらされて 守るべきものも 何も なくなった 破れて 疲れた ビニールハウス みたいに バスは 闇の中を まっすぐ 走っていく ねぇ きみは いつも ぴかぴかで いつも 目的 めがけて 迷わ…

『リリーのすべて』(3)ーわたしの中の、“火掻き棒”ー

“あぁ、カン違い” 漫画『サザエさん』の中に、とても興味深いエピソードがあります。 カツオくんが、交通量の多い大通りに面した歩道を歩いていると、同じ学校に通う女の子に出会います。 「ア!! 一組の岡さん」 岡さんは、言います。 「アラ このへんはじめ…

Let's Dance

踊れ 踊れ お人形さん この世は 楽しい ダンスホール きみは どっち ダンサー それとも ダンスホール ダンサーは もちろん 花がた スター どんな 床でも 思いのまま 難しい ステップ きめて すべるように 華麗に 踊る ごらん 彼が 踊る ダンスフロアを おび…

『リリーのすべて』(2)ー「わたし」を生かすもの、あるいは、「殺す」ものー

雪だるまの“恋” アンデルセン童話の中に、『雪だるま』というお話があります。 雪だるまは、外から見える家の中のストーブが、赤々と、時折、ちらちらと炎の舌を見せながら燃えるのを見た途端、なんとも妙な気持ちになり、胸が張り裂けそうになるのです。 “…

涙の お池

おなかが すいた ハンプティ・ダンプティ 小さな お庭の 塀に 座って 食べもの といえば 自分の 涙 だけ くる日も くる日も ひっきりなしに 泣き続けた ものだから 涙は やがて 小さな お池に なった ある朝 まぶしい 太陽と 真っ青な 空が お池に 映って ハ…

「メンドクサイ」

「ねぇ めんどうに なったんでしょ あたしのこと あたしだって あたしのこと めんどくさい もの」 けだるそうに 目をほそめ むくれて 窓のそと 行き交う人を 見るともなしに 見ている きみの 白い 頬が まぶしい 斜陽の いたずら 「だから もう いいじゃない…

「息を して」

熱く 冷たい 砂浜を ただ ひたすらに かけていく 足を とられ 息を 切らし 高く 深い 砂丘で ただ ひたすらに もがきつづける のぼっているのか 落ちているのか わからずに 「こころ」「からだ」「たましい」 呼び名など どうでもいい ただ あなたの その頬…

『リリーのすべて』(1)ー「自分」でいようとすることが、どうしてこんなにも難しいのかー

「ごめんなさい」「すみません」は、最大の防御 つい、一週間ほど前のことでした。 バスの中で、女子大生が2人、そこそこの声量で(少なくとも、車内の人全員に、話の内容がすっかりわかるくらいの)、(マスクをして)、おしゃべりをしていました。 「コロ…

逢魔時

生者と 死者が 行き交う その刻 闇の 重さに ねじ伏せられて 太陽は 決して 明日を 約束しない 「金色(こんじき)の麦 この胸 いっぱいに 積んだら 帰ろう」 と それが ただの書割だと 気づく頃には もう 遅い 頭上に 迫る 黒雲と 稲光 カラスの群れが 最後…

星月夜

ぼんやりと 目が かすんだように 世界の 何もかもが 二重にも 三重にも にじんで 見えることが ある きのうまで つい 一瞬間前までは はっきりと しっかりとした そのかたちにしか 見えなかったものが 光 でさえ 闇 でさえも もはや わたしに 親(ちか)しく…

アーサー.C.クラーク 『幼年期の終わり』(3)―苦しい「個」の生は、いったい何のために?―

過ちは去りゆく……… この間、何気なく、テレビ(いずれ去りゆく運命にあるじじばばメディア、と私はよく、パートナーに言っていますが)を見ていて、いまさらのように気がついたことがありました。 そうか、「過去」とは、「過ちが去る」、と書くのだっけ……… …

アーサー.C.クラーク 『幼年期の終わり』(2)―ヒトがヒトの正体を知らなさすぎる、という謎―

数週間前の土曜の夕食時、テレビを見ていて、思わず、カレーを食べる手が止まりました。 見ていたのは、NHK・Eテレの『地球ドラマチック』で、『ハッブル宇宙望遠鏡~宇宙の謎を探る30年間の軌跡~』です。 ハッブル宇宙望遠鏡は、宇宙が始まったばかり…

アーサー.C.クラーク 『幼年期の終わり』(1)―ヒトの戦争好きは、ヒトの幼きゆえなのか―

昨年8月、NHK・Eテレの『100分で名著』、ロジェ・カイヨワの『戦争論』が取り上げられたとき、指南役の西谷修氏は、「現代(いま)は、冷凍庫の中で戦争しているようなもの」、と言いました。 私は、なんてうまい表現だろう、と思いました。 あるいは、…

日暮らし

でこぼこした 熱い アスファルト とおり雨が 残した 気まぐれな 水たまり 泥水の 上にも まぶしい 太陽が 反射して 直視 することは できない ヒグラシが 鳴く 晩夏の 夕暮れ 落ちくぼんだ 道端に からからに なって 上向いた ブローチみたいに 完璧な セミ…

ウィリアム・ゴールディング『蠅の王』(6)―なぜ人は、“人間らしさ”=優しさやあたたかさ、思いやりだと思うのか?

人間は、そんなにいいものか? 「いったいみなさんは、人間の本性に利己主義的な悪が関与していることを否定する義務を感じなければならぬほど、上司や同僚から親切にされたり、敵に義侠心を見出したり、周囲からねたまれずにいたりしているのでしょうか。」…

ウィリアム・ゴールディング 『蠅の王』 (5)

“そのとき”が来るまで、誰も気づかない さて、ここからは、再び、ネタバレになりますので、ご注意ください。 前回ふれた、少数派は「悪」とみなされやすい、という人間心理の傾向は、『蠅の王』の物語でも、その後の少年たちの行動に徐々に影響を及ぼし始め…

ウィリアム・ゴールディング 『蠅の王』(4)…にかこつけて、「マスクするのしないの云々かんぬん」について

「ラーフは他の所を通らず、この固くなっている一条の砂地の上を歩いていった。考えごとをしたかったからである。この砂地の上だけしか、足に気をとられずに自由に歩ける所はほかになかった。波打ち際を歩きながら、彼はあることに気づき、愕然とした。この…