他人の星

déraciné

2021-01-01から1年間の記事一覧

ふうせん とばそ

きのう までの かなしいこと くるしいこと いやなこと つらいこと ぜんぶ ぜんぶ 吹き込んで 風船にして 飛ばそう 野を越え 山越え 谷越えて ぐんぐん ぐんぐん 空高く あがったら 胸の いたみも 軽くなる かなしみなんて 忘れてる 怒ったことも みんな みん…

青い夢

神々の 書架に はしごをかけた ふとどきもの どこまでも どこまでも 高くつらなる 天井知らずの 書物の棚に いったい 何を 探そうというのか 妖艶な 青い蝶が舞い 神秘の 青い花が 咲き乱れる野を 彼は 探しつづける 人を誘う 森の 暗がりにも 人を惑わす 湖…

太陽の 素顔

わたしは 太陽の 顔を 知らない かたち あるものは すべて おわりを迎える 秋の 歩道に 色あせた 落ち葉も 蝶の 羽の かけらも 雨に濡れて へばりついている わたしには それが 深い もっと深い 谷底まで 落ちていかないように けんめいに しがみつく さいご…

ヒリキ なキミ へ

赤い くれよんで ぼくを 汚す ぐるぐる ぐるぐる 線を描いて 堂々巡り くれよんが 折れても つめが 赤く染まっても 止まらない 赤い 赤い ヒガンバナ おしべについた 朝露は 泣いた あとの きみの まつげみたいだと ぼくは 思った 青い リンドウの花は 野に …

蝉ノ 声ハ 夏ノ オワリ

愛を 叫んで ひと夏 ノドは裂け ぼくは いま 道端に 横たわる もう 飛べない もう 鳴けない 両手が かすかに 動く だけ 愛を 叫んで ひと夏 胸も裂け いま ぼくの 細い呼吸を 秋風が 何とか つないでる 思い わずらう 恋は 赤より ずっとずっと 熱い ブルー …

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(5)―「それでも、やっぱり、“エヴァ”が好き」

“親は、他人のはじまり” 自分と、「世界」―多くの場合、それは、「他人」の存在に象徴されますが―との間に、どうしても感じてしまう、違和感。 それを、「おそろしい」、「こわい」、「こころぼそい」、という感覚でもって、私が初めて意識したのは、たしか…

あいしてル

ひ と いらだち を 感じる いきどおり を 感じる いたみ を 感じる 異星人のように 異質で いごこちが 悪くて いれば いなければいいのに と 思う いなければ いればいいのに と 思う いとおしい と 思うのは 気まぐれな 晴れ間のようで のち ずっと 曇り の…

胸いっぱいの 愛を

風が吹く夜 彼は ひとり 空き地で ボールを 蹴っている ほんとうは 小さい彼を 街灯のあかりが 大人のように 大きくする 昼間の光の下にも 彼はいて こっそりと 風が揺らす 枝葉の木陰で うかれ 遊び ひっそりと いじわるな 皮肉を言っては くすくす 笑う 「…

記憶

あれは いつのこと だっただろう 彼女は ひとりで 波打ち際に 立っていた はじめ ぼくは 彼女の つまさきを いつも 貝殻にしてやるようにして 塩辛い舌で もてあそんでいた ほんの おあそびの つもりで 彼女の 足のまわりの砂を さらっていった 彼女の 足は …

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(4)―「僕たちの、失敗」

「何十日も仕事して、その持久戦に耐えていくあれがなくなって。だからしんどくなってきて。あの状態で生きていこう思ったら、誰か他人でも親戚でもね、僕がその時点でも思っとったんやけど、十二万円の障害年金渡すから、上げ膳据え膳でずっと一つの部屋に…

夜ごとの 訪問者

「ねぇ きみ」 僕は この声に 慣れている この声を 知っている 夜ごと あらわれる 轢死した という 男の 声だ 「あの 遮断機も 警報機も 人を 電車から 守るためのものじゃない です」 また そこから 話すか と 思いつつ 僕は 布団の上で 身じろぎもしない …

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(3)―「彼女が農作業着に着替えたら」

アヤナミが、農作業着なんか着ちゃったら、おしまいですよ、そりゃ。 水着なら、ともかくも………。 (綾波には、やっぱり白が……) 新しい“自然”—都市型無秩序 繰り返しになりますが、私がウルトラマンや、ウルトラセブンに感じていた郷愁がいったい何だったの…

遺書

遺書を書いて それから つかの間 この世に 顔を出して 振り返れば 水が一滴 落ちる間 くらいに とても 短く けれども あの太陽に じりじりと 照りつけられれば 永遠のように 長く 雨の夜には 雨音が こっちへ こっちへと とても 易しく 道筋を つけるから と…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2)—「大人になんか、なりたくないよ」

「大人というものは侘しいものだ。愛し合っていても、用心して、他人行儀を守らなければならぬ。……見事に裏切られて、赤恥をかいた事が多すぎたからである。人は、あてにならない、という発見は、青年の大人に移行する第一課である。大人とは、裏切られた青…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(1)―「あの日の夢を、花束にして」

「人間同士の信頼感を利用するとは、恐ろしい宇宙人です。でもご安心ください、このお話は遠い遠い未来の物語なのです。え?何故ですって?我々人類は今、宇宙人に狙われるほどお互いを信頼してはいませんから」 ―『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」 「…

『パラサイト 半地下の家族』(4)―どっちが“パラサイト”?―

「平和」はいつも犠牲者の屍の上に 私は、子どもの頃からウルトラマンが大好きで、特撮シリーズに夢中になったまま、大きくなりました。 中でも、今でも見るたびに、どうしても涙が出てしまう作品があります。 それは、『ウルトラマン』の第23話「故郷は地球…

機械 ノ 涙

ずっと ずっと 雨 だった ような 気がする ずっと ずっと 晴れ だった ような 気がする いまは ただ 風が吹いている 死にものぐるいで やすらぎを 探すのに そんなものは どこにもない 水を打ち 波を立て 木の幹を 引き裂いて 泣き叫び どこまでも どこまで…

『パラサイト 半地下の家族』(3)―「悪」もなく「善」もなく―

ここからは、大いにネタバレを含みますので、ご注意ください。 さて、めでたくパク家に全員が職を得たキム家は、パク一家が息子ダソンの誕生祝いのキャンプに出かけたのをいいことに、パク邸の居間を占拠し、酒盛りを始めます。 そして、この夜、予期せぬ事…

2月の空

「すみません」 という 言葉を その場しのぎの 言い逃れ みたいに 何度も 何度も 言っている うちに いつしか 何の 味も しなくなる 「すみません」 すみません って 何だっけ 「ありがとう」 という 言葉を 背筋に 寒気がはしるほど ほんとうは 言いたくも …

『パラサイト 半地下の家族』(2)―自立?-

「めしを食べなければ死ぬ、という言葉は、自分の耳には、ただイヤなおどかしとしか聞えませんでした。その迷信は、(いまでも自分には、なんだか迷信のように思われてならないのですが)しかし、いつも自分に不安と恐怖を与えました。人間は、めしを食べな…

鉛の兵隊

光から わが身を 隠さんがため 迷彩服 着た すれっからし 指で 空を 四角く 囲う だだっぴろい 空 など 無用の長物 腹いせに 高く うつろな 尖塔を いくつも いくつも 空へ 突き刺す まるで 太陽でも 砕ける ような 轟音 爆音 鳴らせば 天地を 支配した よう…

『パラサイト 半地下の家族』(1)ー人間の価値?ー

ワインの価値は 「つまり、人間はラベルなんだよ。一流のビンテージなら、一流の人間に飲まれ、安いビンテージなら、安い人間にしか相手にされない」 「そうかな。たとえこれが1000円の安いワインだったとしても、12万円だって言われたら、みんな、ありがた…

bus stop

ぼくは ひとり 誰も 乗っていない 深夜のバスに ゆられている 雨や 風に さらされて 守るべきものも 何も なくなった 破れて 疲れた ビニールハウス みたいに バスは 闇の中を まっすぐ 走っていく ねぇ きみは いつも ぴかぴかで いつも 目的 めがけて 迷わ…