他人の星

déraciné

日記

赤い くつ

今宵の 暮色は ほんのり 白く 見あげれば 白鳥たちが 真白い おなかを見せて 飛んでいく かなしい声で 鳴きながら 風は 口を すぼめて ひゅうひゅうと ためらいがちに うしなわれたものの 名を ひとつ ひとつ 読みあげる けれど わたしは いつも 欲に 目がく…

happy-go-lucky

「人ごみは 苦手」 なんて 言ってた くせに なんで 来ちゃったかなあ 正月 三日目の 初売り ショッピングモール 実は かっこつけてた だけなんでしょ 人が 多いの なんて 本当は そんな 気になりも しないのに ただ ただ 疲れて 人が大勢 上り下りする エス…

キレイハキタナイ キタナイハキレイ

目を 伏せて ずっと 下を 向いて 歩いて いたら いつの間にか 季節は うつり イチョウは 黄色に メタセコイアは 赤茶色に ツタは 紅色に 染まって いた 咲き つくした コスモスは 背丈が 伸びすぎて 道に倒れ 小さい 真っ赤な花を たくさんつけた キクは み…

僕たちの 大失敗

冬のにおいが 鼻を かすめると みんな 家路を 急ぎたくなる らしい とっぷり 暮れた 闇は 濃くなるばかりで ああ 暗くて 寒いのは 死んで 墓に入るまで 勘弁 してくれよ 昼光色の 明るい あたたかい 我が家へ はやく はやく 帰ろう それは いっこうに かまわ…

劇中劇

誰かの 過去が 流れる 映画の シーン モノクローム の モノローグ セピア色 って 名前が素敵 と思ったら 由来は イカスミだと 知って 何だか 妙にかなしくて 笑った日 子どもの とき うちあげられた 落下傘花火を 必死で 追いかけた けれど わたしは決して …

涙を ながしながら みあげた 空 「いったい 何が そんなに 欲しい?」と きいてくる 澄みわたる 青の かなしみと 冷静 情熱の 赤も かなわない 熱情の 青い炎に 目が 熱く 痛む うつむきながら 時も忘れて 歩いて いると 太陽は 今日最期の光を 矢にして 投…

「無神経」

「食べなくて いい って 思っちゃうんだ」 と 彼女は 言った もう 私を 攻撃しないで と 笑顔で 守る 細い からだ は 秋の陽に 透ける 蜘蛛の巣 みたいに 消えそうで わたしは その手を とりたく なった けれども それは 彼女の もの ではなくて わたしの 淋…

「気持ち 悪い」

ありがとう ありがとう って言うたびに いつも どこかが むずむずする その ことばを ならった日々を 思い出す からだ 「“ありがとう”は?」 ママが 言った 「お友だち」と そのママの前で もらったのが クッキーだったか チョコレートだったか キャンディー…

双頭の 蛇 

何もかも 気に入らない ナニモカモ キニイラナイ 何だって? 何かが おまえの お気に召すようになるとでも? 何もかも 思いどおりにならぬ ナニモカモ オモイドオリニナラヌ 何だって? 何かが おまえの 思いどおりになるとでも? 無数の あざけり笑いが 不…

真夏の 葬列

真夏の 日盛りに 葬列を 見た 標本のように 完璧な セミの幼虫が 地を這っている と 思ったら それは 黒々とした 小さい蟻が 無数にたかって 少しずつ 少しずつ すすんでいく そのさまであって きみの いのちは もう ないのだった 大事な 大事な 食糧を 蟻た…

信号機と ヒグラシと 同調圧力

絶対 必要ない ところに ついてる 信号機って あれ どういうわけなんだろうって そこに 来るたび 思い出したように 思う まるで 自然に 朽ち果てて 消滅するはずの いらない 配線の 一部が残ってる みたいな あるいは 廃墟の 一部 みたいな でもね みんな 赤…

「こんにちは」と「さようなら」のあいだ

もし 「こんにちは」 と 「さようなら」の間が もっと 短かったなら もっと 短くて はかないものだと ちゃんと わかって いたなら きみに もっと やさしく できたの かな ぼくが しているのは 寿命 とか 余命 とかの 話じゃなくて 「きょう」 がある ってこ…