他人の星

déraciné

映画

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2)—「大人になんか、なりたくないよ」

「大人というものは侘しいものだ。愛し合っていても、用心して、他人行儀を守らなければならぬ。……見事に裏切られて、赤恥をかいた事が多すぎたからである。人は、あてにならない、という発見は、青年の大人に移行する第一課である。大人とは、裏切られた青…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(1)―「あの日の夢を、花束にして」

「人間同士の信頼感を利用するとは、恐ろしい宇宙人です。でもご安心ください、このお話は遠い遠い未来の物語なのです。え?何故ですって?我々人類は今、宇宙人に狙われるほどお互いを信頼してはいませんから」 ―『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」 「…

『パラサイト 半地下の家族』(4)―どっちが“パラサイト”?―

「平和」はいつも犠牲者の屍の上に 私は、子どもの頃からウルトラマンが大好きで、特撮シリーズに夢中になったまま、大きくなりました。 中でも、今でも見るたびに、どうしても涙が出てしまう作品があります。 それは、『ウルトラマン』の第23話「故郷は地球…

『パラサイト 半地下の家族』(3)―「悪」もなく「善」もなく―

ここからは、大いにネタバレを含みますので、ご注意ください。 さて、めでたくパク家に全員が職を得たキム家は、パク一家が息子ダソンの誕生祝いのキャンプに出かけたのをいいことに、パク邸の居間を占拠し、酒盛りを始めます。 そして、この夜、予期せぬ事…

『パラサイト 半地下の家族』(2)―自立?-

「めしを食べなければ死ぬ、という言葉は、自分の耳には、ただイヤなおどかしとしか聞えませんでした。その迷信は、(いまでも自分には、なんだか迷信のように思われてならないのですが)しかし、いつも自分に不安と恐怖を与えました。人間は、めしを食べな…

『パラサイト 半地下の家族』(1)ー人間の価値?ー

ワインの価値は 「つまり、人間はラベルなんだよ。一流のビンテージなら、一流の人間に飲まれ、安いビンテージなら、安い人間にしか相手にされない」 「そうかな。たとえこれが1000円の安いワインだったとしても、12万円だって言われたら、みんな、ありがた…

『リリーのすべて』(3)ーわたしの中の、“火掻き棒”ー

“あぁ、カン違い” 漫画『サザエさん』の中に、とても興味深いエピソードがあります。 カツオくんが、交通量の多い大通りに面した歩道を歩いていると、同じ学校に通う女の子に出会います。 「ア!! 一組の岡さん」 岡さんは、言います。 「アラ このへんはじめ…

『リリーのすべて』(2)ー「わたし」を生かすもの、あるいは、「殺す」ものー

雪だるまの“恋” アンデルセン童話の中に、『雪だるま』というお話があります。 雪だるまは、外から見える家の中のストーブが、赤々と、時折、ちらちらと炎の舌を見せながら燃えるのを見た途端、なんとも妙な気持ちになり、胸が張り裂けそうになるのです。 “…

『リリーのすべて』(1)ー「自分」でいようとすることが、どうしてこんなにも難しいのかー

「ごめんなさい」「すみません」は、最大の防御 つい、一週間ほど前のことでした。 バスの中で、女子大生が2人、そこそこの声量で(少なくとも、車内の人全員に、話の内容がすっかりわかるくらいの)、(マスクをして)、おしゃべりをしていました。 「コロ…

映画『追想』(3)

「ねえ ダーリン 世の中には セックスに過剰に何かを求める 悲しい人たちが 多すぎるわ」 岡崎京子『3つ数えろ』 「あなたの欲しいものは あなたの所有していないものである」 「セックスが我々を救ってくれない今、いかなる衝動が我々を救ってくれるのか?…

映画『追想』(2)

かくも凶暴な… 「恋愛は 流動的なもの オリジナリティなもの 常に個人の力仕事よ つまり 世相という 道徳観念に もたれかかった 恋愛はけっして たくましくなれない ってことなのよね」 大島弓子『水の中のティッシュペーパー』 いわゆる「24年組」と呼ばれ…

映画『追想』(1)

「人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは莫迦莫迦しい。重大に扱わなければ危険である」 芥川龍之介『侏儒の言葉』 大好きな言葉です。 人生をあらわす言葉として、私は、これ以上の表現に出会ったことはありません。 芥川は、本当にすごいな、頭が…

『心と体と』(2)

私たちはなぜ死ぬのか? ところで、人は、なぜ、死ななければならないのでしょうか? 結論からいえば、“性”をもっているから、なのです。 地球上に、最初に生命が誕生してから20年の間生きていた生物は、すべて「1倍体生物」と呼ばれるもの(たとえば大腸菌…

『心と体と』(1)

“If you've got love you sights watch out,love bites” ーもし、目の前に、愛が見えたら 気をつけろ、愛は、人を刺すからー “Love Bites” DEF LEPPARD さて、問題です。ジャジャン♪ あなたが、誰かに恋をしたとしましょう。 あなたは、好きだから、その人を…

『モンスター』(7)

さて、私は、小さいころから、高いところがすごく(すごくすごくすごく)好きで、高いところを見ると、興奮を抑えきれず、走っていってしまうほどの、高所愛好症です。 今は亡き、大好きだった義父が、私の高所愛好症を知って、パートナーの郷里へ帰るたびに…

『モンスター』(6)

「さて、目を個人から転じて、今日なおヨーロッパに荒れ狂っているこの大戦(註:第一次世界大戦)に向け、どれほどの野蛮、残忍、虚偽がいまや文化世界の中を横行しているか、一瞥してみて下さい。みなさんは、ほんの一にぎりの、良心を持たない野心家と誘…

『モンスター』(5)

「長期間にわたって、道徳的な手本に基づいて行動するよう強いられている人は、この手本がみずからの欲動の動きの表現でない場合には、心理学的な意味では、みずからの力量を超えた生活をしていることになるのであり、客観的には偽善者と呼ばれてしかるべき…

『モンスター』(4)

「きれいな」文化 「どんな人にも破壊的で、反社会的で、文化に抗する傾向がそなわっている」 「一部の人々の満足が、その他の、おそらく多数の人々の抑圧の上に成立することを前提とする文化にあっては(現在のすべての文化の現状はこうしたものなのだ)、…

『モンスター』(3)

むかし、大学卒業も間近だというのに、私がまったく就職活動をしないのを、当時お世話になっていた助手の先生から、心配されたことがありました。 あなた、いったいどういうところなら、就職する気になるの、ときかれたので、私は、人とつきあわなくてすむと…

『モンスター』(2)

「最小関心の原理」 恋愛関係では、自分たちの関係にあまり関心をもっていない方が、その関係のリーダーシップや、運命の鍵を握ってしまう、というのが、対人魅力の心理学でいう、「最小関心の原理」です。 関係への関心があまりない、ということは、関係の…

『モンスター』(1)

「将来の夢」 私が小さい頃、何になりたいと思っていたかというと、ファッションデザイナーでした。 どうしてか、といえば、父や母をモデルにして、服のデザインを考え、それを絵に描いてみるのが好きだったからです。 さらにいうと、それを、父や母が、とて…

『LOVELESS ラブレス』(6)

「私の眼は彼の室の中を一目見るや否や、あたかも硝子で作った義眼のように、動く能力を失いました。私は棒立(ぼうだち)に立竦(たちすく)みました。それが疾風の如く私を通過したあとで、私は又ああ失策(しま)ったと思いました。もう取り返しが付かないとい…

『LOVELESS ラブレス』(5)

社会や世間にとって、安全かつ無害な人間をつくり出し、その“メンテナンス”を一手に請け負う家族。 家族に自己責任と自助努力を強いる社会であればあるほどに、個々の家族の閉鎖性は高くなります。 家族とは、家族構成員が反社会的行動や非社会的行動を取っ…

『 LOVELESS ラブレス』(4)

……さて、今日は、クリスマスイブですね。 別に、そういう決まりがあるわけでもないのに、クリスマスともなれば、プレゼントを買って、ケーキやごちそうを食べないと気がすまないのは、いったいなぜなのでしょう? クリスマスのケーキを、フォークでつつきな…

『LOVELESS ラブレス』(2)

探しものをする。 それも、何か、とても重要で、大切なものを探す場合、その行為や行動が、命にかかわる事態を引き起こすことになるかもしれない―。 私は、この映画を観るまでは、そんなふうに考えてみることはありませんでした。 実際、「ものをなくす」、…

『LOVELESS ラブレス』(1)

何か、面白い映画が観たい。すごく、観たい。 …そう思って、レンタル屋に出かけていき、いざDVDを選ぼうとすると、いつもひどく迷ってしまい、パートナーからあきれられる、という話は、以前にも書いたように思います。(いや、確実に書きましたね)。 たし…

『沈黙―サイレンス―』映画と、原作の両方から (10)

さて、本題からだいぶ逸れてしまいましたが、話を『沈黙』へ戻します。 苦難に満ちた旅路をたどり、布教活動をし、村の人たちに救いと赦しを与える役目を果たしていたロドリゴ神父は、もし神が存在しないのならば、自分の半生は滑稽であるし、殉教した信徒の…

『沈黙―サイレンス―』映画と、原作の両方から (9)

「死ぬか、狂うか、宗教か」 ところで、夏目漱石は、後期三部作の一つである『行人』の主人公、長野一郎に、こんな言葉を言わせています。 「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」 『行人』 塵労 三十九 …

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (8)

“神”は存在するのか? さて、幼年から思春期までの成長期を、何となく、キリスト教信仰の空気のなかですごしてきた私は、大学へ進んだ頃までは、神の存在を、“何となく”信じていたように思います。 たとえば、友人との間で、自殺についての話題が出たとき、…

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (7)

掌の内に守るもの、掌の内で守ってくれるもの ところで、宮崎賢太郎氏は、日本のカクレキリシタン信仰を、「キリスト教的雰囲気を醸し出す衣をまとった典型的日本の民俗宗教の一つ」であり、その深層には、「さまざまなフェティシズム(呪物崇拝)的霊魂観念…