他人の星

déraciné

映画

『心と体と』(2)

私たちはなぜ死ぬのか? ところで、人は、なぜ、死ななければならないのでしょうか? 結論からいえば、“性”をもっているから、なのです。 地球上に、最初に生命が誕生してから20年の間生きていた生物は、すべて「1倍体生物」と呼ばれるもの(たとえば大腸菌…

『心と体と』(1)

“If you've got love you sights watch out,love bites” ーもし、目の前に、愛が見えたら 気をつけろ、愛は、人を刺すからー “Love Bites” DEF LEPPARD さて、問題です。ジャジャン♪ あなたが、誰かに恋をしたとしましょう。 あなたは、好きだから、その人を…

『モンスター』(7)

さて、私は、小さいころから、高いところがすごく(すごくすごくすごく)好きで、高いところを見ると、興奮を抑えきれず、走っていってしまうほどの、高所愛好症です。 今は亡き、大好きだった義父が、私の高所愛好症を知って、パートナーの郷里へ帰るたびに…

『モンスター』(6)

「さて、目を個人から転じて、今日なおヨーロッパに荒れ狂っているこの大戦(註:第一次世界大戦)に向け、どれほどの野蛮、残忍、虚偽がいまや文化世界の中を横行しているか、一瞥してみて下さい。みなさんは、ほんの一にぎりの、良心を持たない野心家と誘…

『モンスター』(5)

「長期間にわたって、道徳的な手本に基づいて行動するよう強いられている人は、この手本がみずからの欲動の動きの表現でない場合には、心理学的な意味では、みずからの力量を超えた生活をしていることになるのであり、客観的には偽善者と呼ばれてしかるべき…

『モンスター』(4)

「きれいな」文化 「どんな人にも破壊的で、反社会的で、文化に抗する傾向がそなわっている」 「一部の人々の満足が、その他の、おそらく多数の人々の抑圧の上に成立することを前提とする文化にあっては(現在のすべての文化の現状はこうしたものなのだ)、…

『モンスター』(3)

むかし、大学卒業も間近だというのに、私がまったく就職活動をしないのを、当時お世話になっていた助手の先生から、心配されたことがありました。 あなた、いったいどういうところなら、就職する気になるの、ときかれたので、私は、人とつきあわなくてすむと…

『モンスター』(2)

「最小関心の原理」 恋愛関係では、自分たちの関係にあまり関心をもっていない方が、その関係のリーダーシップや、運命の鍵を握ってしまう、というのが、対人魅力の心理学でいう、「最小関心の原理」です。 関係への関心があまりない、ということは、関係の…

『モンスター』(1)

「将来の夢」 私が小さい頃、何になりたいと思っていたかというと、ファッションデザイナーでした。 どうしてか、といえば、父や母をモデルにして、服のデザインを考え、それを絵に描いてみるのが好きだったからです。 さらにいうと、それを、父や母が、とて…

『LOVELESS ラブレス』(6)

「私の眼は彼の室の中を一目見るや否や、あたかも硝子で作った義眼のように、動く能力を失いました。私は棒立(ぼうだち)に立竦(たちすく)みました。それが疾風の如く私を通過したあとで、私は又ああ失策(しま)ったと思いました。もう取り返しが付かないとい…

『LOVELESS ラブレス』(5)

社会や世間にとって、安全かつ無害な人間をつくり出し、その“メンテナンス”を一手に請け負う家族。 家族に自己責任と自助努力を強いる社会であればあるほどに、個々の家族の閉鎖性は高くなります。 家族とは、家族構成員が反社会的行動や非社会的行動を取っ…

『 LOVELESS ラブレス』(4)

……さて、今日は、クリスマスイブですね。 別に、そういう決まりがあるわけでもないのに、クリスマスともなれば、プレゼントを買って、ケーキやごちそうを食べないと気がすまないのは、いったいなぜなのでしょう? クリスマスのケーキを、フォークでつつきな…

『LOVELESS ラブレス』(2)

探しものをする。 それも、何か、とても重要で、大切なものを探す場合、その行為や行動が、命にかかわる事態を引き起こすことになるかもしれない―。 私は、この映画を観るまでは、そんなふうに考えてみることはありませんでした。 実際、「ものをなくす」、…

『LOVELESS ラブレス』(1)

何か、面白い映画が観たい。すごく、観たい。 …そう思って、レンタル屋に出かけていき、いざDVDを選ぼうとすると、いつもひどく迷ってしまい、パートナーからあきれられる、という話は、以前にも書いたように思います。(いや、確実に書きましたね)。 たし…

『沈黙―サイレンス―』映画と、原作の両方から (10)

さて、本題からだいぶ逸れてしまいましたが、話を『沈黙』へ戻します。 苦難に満ちた旅路をたどり、布教活動をし、村の人たちに救いと赦しを与える役目を果たしていたロドリゴ神父は、もし神が存在しないのならば、自分の半生は滑稽であるし、殉教した信徒の…

『沈黙―サイレンス―』映画と、原作の両方から (9)

「死ぬか、狂うか、宗教か」 ところで、夏目漱石は、後期三部作の一つである『行人』の主人公、長野一郎に、こんな言葉を言わせています。 「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」 『行人』 塵労 三十九 …

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (8)

“神”は存在するのか? さて、幼年から思春期までの成長期を、何となく、キリスト教信仰の空気のなかですごしてきた私は、大学へ進んだ頃までは、神の存在を、“何となく”信じていたように思います。 たとえば、友人との間で、自殺についての話題が出たとき、…

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (7)

掌の内に守るもの、掌の内で守ってくれるもの ところで、宮崎賢太郎氏は、日本のカクレキリシタン信仰を、「キリスト教的雰囲気を醸し出す衣をまとった典型的日本の民俗宗教の一つ」であり、その深層には、「さまざまなフェティシズム(呪物崇拝)的霊魂観念…

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (6)

「美しいものを愛する」ということ ロドリゴ神父にとって、キリストは、「自分の生涯の中で最も美しいと思ってきたもの」であり、最も聖らかと信じたもの」であり、「最も人間の理想と夢にみたされたもの」でした。 太宰治は、『駆込み訴え』で、裏切り者の…

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (5)

宣教師たちの見た日本―“天国に一番近い島国” ところで、宣教師=司祭(パードレ)たちにとっての信仰とは、どのようなものだったのでしょうか。 宣教師たちが、キリスト教弾圧下の日本にやってきたのは、キリスト教布教の灯を消さないためでもあったのですが…

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (4)

「弱き者」、汝の名は……… ところで、「この世の弱き者」の代表として、物語の重要な位置を占める「キチジロー」は、ロドリゴ司祭を裏切り、役人に売っておきながら、彼の牢に近づき、しつこく何度も告悔(コンヒサン)をしに来るのです。 同じ信者仲間からは…

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (3)

「踏んでも、踏まなくても」―なぜ、キリシタンは弾圧されたのか ところで、なぜ、キリシタンは弾圧されたのでしょうか。 弾圧されてもなお、(踏み絵を踏むとも、踏まずとも)、信者たちが守りたかった“信仰”とは、いったい何に対する信仰だったのでしょうか…

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (2)

“この世の愚かな者、弱き者の宗教” 「しかし神は、知恵ある者をはずかしめるために、この世の愚かな者を選び、強い者をはずかしめるために、この世の弱い者を選ばれたのです。」 コリント人への手紙 第1 第1章26節 キリスト教は、紀元前後、ローマ圧政下で…

『沈黙―サイレンス―』―映画と、原作の両方から (1)

1640年、江戸時代初期の日本。布教活動をしていたイエズス会の高名な宣教師、フェレイラが、厳しいキリスト教弾圧下で捕らえられ、ついに棄教した、という知らせに、弟子のセバスチャン・ロドリゴ神父と、フランシス・ガルペ神父は耳を疑う。 日本へ渡り、自…

『葛城事件』(4) ※ネタバレあり

二人目の犠牲者、そして………… 保の自殺によって、リミッターが外れたように、稔は、凶行に走ります。 刃先の長いサバイバルナイフが、その手にしっかりと握られ、陽の光を受けて光るのを、稔は、自室のベッドの上で、じっとみつめます。 そして、リュックを背…

『葛城事件』(2) ※ネタバレあり

家庭内殺人、一人目の犠牲者 葛城家の過去の回想で、この家族の、おそらくもっとも「幸せ」だったであろう時代の場面が描かれます。 父・清は、「家」を建て、一国一城の主となり、息子たちが生まれた記念に木を植えたと、家に招いた近所の友人たちに、誇ら…

『葛城事件』(1) ※ネタバレあり

「残酷なおとぎ話」 かなりきつい内容だ、といううわさを、何となく耳にしつつ、でも、いずれきっと観ようと思っていた作品でした。 この映画を観て、この「家族」を見て、どう感じるかは、当然、自分が育ってきた家族、そこから得た家族像が影響することで…

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2) ※ネタバレあり

乗り越えられることと、乗り越えられないこと やがて、リーの、その街での過去が明らかになります。 リーと、その妻、ランディの間には、まだ幼い3人の子どもがいたのですが、家が火事になり、3人とも焼け死んでしまったのです。 火事の直前、リーは、たく…

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(1)※ネタバレあり

何か面白そうな映画はないかと、youtubeで予告編を見ていて、気になったのが、本作でした。 「面白い」映画、というのは、私にとって、たとえば、こんな感じです。 ①何もかも忘れて、お腹を抱えて笑える映画 ②静かな痛みを、胸にのこす映画 ③驚愕とともに、…

『ウィンド・リバー』(2)※ネタバレあり

現実の痛みに満ちた映画 私が、この映画の世界を、「現実世界と地続きの悪夢」だと感じたのは、物語が、事実に則してつくられているからではありません。 「ネイティブアメリカンと白人の間」だけの問題ではないからです。 人間のいるところなら、世界中どこ…