他人の星

déraciné

アーサー.C.クラーク 『幼年期の終わり』(3)―苦しい「個」の生は、いったい何のために?―

過ちは去りゆく……… この間、何気なく、テレビ(いずれ去りゆく運命にあるじじばばメディア、と私はよく、パートナーに言っていますが)を見ていて、いまさらのように気がついたことがありました。 そうか、「過去」とは、「過ちが去る」、と書くのだっけ……… …

アーサー.C.クラーク 『幼年期の終わり』(2)―ヒトがヒトの正体を知らなさすぎる、という謎―

数週間前の土曜の夕食時、テレビを見ていて、思わず、カレーを食べる手が止まりました。 見ていたのは、NHK・Eテレの『地球ドラマチック』で、『ハッブル宇宙望遠鏡~宇宙の謎を探る30年間の軌跡~』です。 ハッブル宇宙望遠鏡は、宇宙が始まったばかり…

アーサー.C.クラーク 『幼年期の終わり』(1)―ヒトの戦争好きは、ヒトの幼きゆえなのか―

昨年8月、NHK・Eテレの『100分で名著』、ロジェ・カイヨワの『戦争論』が取り上げられたとき、指南役の西谷修氏は、「現代(いま)は、冷凍庫の中で戦争しているようなもの」、と言いました。 私は、なんてうまい表現だろう、と思いました。 あるいは、…

ウィリアム・ゴールディング『蠅の王』(6)―なぜ人は、“人間らしさ”=優しさやあたたかさ、思いやりだと思うのか?

人間は、そんなにいいものか? 「いったいみなさんは、人間の本性に利己主義的な悪が関与していることを否定する義務を感じなければならぬほど、上司や同僚から親切にされたり、敵に義侠心を見出したり、周囲からねたまれずにいたりしているのでしょうか。」…

ウィリアム・ゴールディング 『蠅の王』 (5)

“そのとき”が来るまで、誰も気づかない さて、ここからは、再び、ネタバレになりますので、ご注意ください。 前回ふれた、少数派は「悪」とみなされやすい、という人間心理の傾向は、『蠅の王』の物語でも、その後の少年たちの行動に徐々に影響を及ぼし始め…

ウィリアム・ゴールディング 『蠅の王』(4)…にかこつけて、「マスクするのしないの云々かんぬん」について

「ラーフは他の所を通らず、この固くなっている一条の砂地の上を歩いていった。考えごとをしたかったからである。この砂地の上だけしか、足に気をとられずに自由に歩ける所はほかになかった。波打ち際を歩きながら、彼はあることに気づき、愕然とした。この…

ウィリアム・ゴールディング 『蠅の王』 (3)

「仮面」は、「顔」を奪う ここからは、ネタバレを含みますので、ご注意ください。 少年たちから、「投票」という民主的な方法で、みんなのリーダーに選ばれたラーフ。 そして、誰よりも自分こそリーダーにふさわしいと思っていたのに、ラーフに負け、狩猟隊…

ウィリアム・ゴールディング 『蠅の王』 (2)

“無意識の偽善者” いま、ちょうどNHKで、『未来少年コナン』というアニメが深夜に再放送されています。 言わずと知れた、あの宮崎駿監督が手掛けた1978年の“名作”ですが、私は、あの中に登場する美少女「ラナ」が、あまり好きではないのです。 彼女の祖父は…

ウィリアム・ゴールディング 『蠅の王』 (1)

“過去は未来に復讐する” 地震は、もとの地形をあぶり出してしまうそうです。 たとえば、もとは湖沼だったり、河川だったところを埋め立てた場所は、どんな強固でゆるがないように見えても、ひとたび地震が襲えばたちまち液状化し、建物の土台をずぶずぶ飲み…