愛
「だって バラのやつ
あんまり 高慢だから」
もし ぼくが
星の王子さまなら
こう言うだろう
「だから
水を やるふりして
風から 守るふりして
あいつの首 絞めてやったんだ
バラのやつ まさか
そんな目に遭うとも思わず
最後まで 高慢ちき だったよ」
けれども 知っていた
そんなことを してまで
見たかったのは
無惨な バラの姿ではなく
ひどく取り乱す
ぼくの 姿
冷えきった
弔いの 朝
「きみは ぼくの
すべてだったよ」と
ありふれた 言葉をたむけ
生気のない
冷たい花弁に
キスをする
そう はじめから
ぼくの中に
バラなんて なかった
はじめから おわりまで
すべて
ぼくが描いた えそらごと
ぼくが描いた 悪夢