「遠く 離れて 地球に一人」
よくいわれることですが、人間は神ではなく、万能ではありません。
けれども、口でそう簡単に言うほど、この身にしみ入るほどにはわかっていないな、と、私自身、自分でもよく思うことがあります。
人間の想像力にも、限界があり、物語の中で、あるいは現実の中で、どんな経験を、どれだけ重ねても、いつまでたっても分からない・変われないことがあって当然なのです。
そうした意味でも、この物語で描かれているのは、間違いなく、私たちに関係する未来についての、最悪のシナリオだったのかもしれません。
そして同時に、地球という、私たちの故郷の行く末をも、提示します。
良くんは、こんなふうに言っています。
「地球は今に、人間が住めなくなるんだ。その前に、さよならをするのさ」
もしかしたら、メイツ星人が地球の気候風土を調査しに来たのは、メイツ星もまた、高度な文明を築いた結果として、大気汚染などがすすみ、もはや生命を育むことのできない星となってしまったために、何らかの解決策を探ろうとしてのことだったのかもしれません。
そして、メイツ星人の死によって、彼が封じ込めていたムルチが蘇り、新マンに倒されたあとも、良くんは、穴を掘ることをやめようとはしません。
良くんは、言います。
「おじさんは、死んだんじゃないんだ。メイツ星に帰ったんだ。ぼくがメイツ星についたら、迎えてくれよ、きっとだよ」
郷は、そんな彼を見ていて、こう言います。
「彼は、地球にさよならが言いたいんだ」
彼自身もひどい迫害を受け、また、この世界でたった一人、親愛の情を感じていた“おじさん”を殺されて(良くんの中では、決して死んではいないのです)しまうような地に、いったい誰が、とどまりたいと思うでしょうか。
あるいは、誰か、彼に、地球を捨てるな、希望をもてと、言える人がいるでしょうか。
いまや、彼の希望は、きっと隠されているはずの宇宙船を探し出し、それに乗って、地球を去り、メイツ星で、再び“おじさん”に会うこと、それだけなのです。
私たちの社会は、いま、どうなっているのでしょう。
相変わらず、リョウくんやメイツ星人が、迫害される社会のままではないのでしょうか。
ウルトラマンも、セブンも、新マンも、ときに、自分が守ろうとした地球人の、欲深さや残酷さに、驚きあきれつつ、それでも使命感をもって、怪獣退治をする姿を、何度か見せています。
その背中には、やるせなさと、切なさと、悲しみが漂っていました。
もし、あのころのように、また、彼らに悲しい思いをさせているとしたら、いったいどうしたらいいのでしょうか。
何しろ、彼らは、自分の命を賭してまで、私たちのために闘ってくれていたのですから。
それだけでなく、優しきヒーローとして、私たちの心に、いつでも寄り添っていてくれたのですから。
《おわり》