不穏
青空と 黒雲が
せめぎ合い
一刻 一刻
姿を 変える
葉が つま先立って
落ちる音 さえ
聞き逃すまいと
きみは
耳を そばだてる
うずたかく 盛りあがった
積乱雲が
緊張が とけたように
崩れていく
空は 奇妙に明るく
押し黙る
きみは じりじりする
嵐の予兆を
寒気のように
肌で 感じたのに
遠雷が
余韻のように
うすれて
消えていく
ぼんやりとした 日没
平穏より 不穏
嵐に近い
人の本体
そぐわない
似合わない
日常を 脱ぎ捨てて
戻りたくなるのは
至極当然 なのに
きみは
激しい雨を 待っていた
朝顔のように
天を仰いで 放心する
その横で
ぼくは
閉じた本を また開いて
黙って すまして
読んでいる
何も 感じない
動じない
ふりをして