大地が 深い口を開き
赤い 血しぶきをあげれば
残るものは 何もないと
ほんとうは 誰もが 知っている
なのに
欲しがることを やめられないのは
ぼくらが
滑車の中の ねずみだから
いつの間にか
一人残らず 迷彩服を 着せられ
人いきれする 雑踏の
不快指数120% の
ジャングルに 投げ込まれ
つけねらい つけねらわれる
ゲームに参戦 せざるをえない
哀れな 戦士たちは
欲しがることを 生きることと
誤解し 錯覚する
気配を消し 息を殺し
記録を記憶ごと 抹消し
与えられるのは
ひどく甘く ひどく苦い
ただ一滴の 水
一度 口に入れようものなら
胸 掻きむしるほど 欲しくなる
とも知らず
欲しくて 欲しくて たまらない
閉鎖病棟の
檻の中から
この身も裂けよ と
手を伸ばす
ほんとうは
何を望み
何を欲していたか など
遠い 忘却の彼方
群衆のジャングルの 中の
閉鎖病棟の 中の
滑車の 中の
哀れなねずみは
いつしか
滑車を回す 力も尽きて
群衆の 足の下に 踏みつぶされ
閉鎖病棟の片隅で
枯れて 小さくなって
誰にも 知られず
息絶える
ああ せめて
あの 遠い 憧れの日
胸焦がし 燃えていた
本気で 愛した あの焔に
ぼくの 亡きがらを
投げ込んでは くれぬだろうか