“all the Lonely People”
何億光年 はるか 遠い
どこかの 星の 小さな部屋で
誰かが 幻灯機を まわしている
そこに 映るのは 何億年も 前に 生きていた 人たちで
いま 映像に 見入る その 誰かにとっては
夢のなかの人 同然 なのだけれど
何億光年も はるか むかし
そこにあった 蒼い星の どこかの交差点で
歩行者信号が 青になる
砂時計の砂が こぼれ出すように
人々が 道路へ あふれ出す
アーケードの天井には いつも
どこかの 子どもが 手放した 風船が へばりついていて
ぼんやり 糸を たらしている
何も釣れない 釣り のように
「あの 孤独な人たちは いったい どこから 来るのだろう」
音楽は
底知れない 深い水
あらんかぎりの 愛と 憧れに 落ちていく
水が 呼吸に まとわりつき
わたしの からだを 支配する
鼓動(ビート)を刻む ふたつの心臓(ハート)が ひとつになる
悦びが 音速で かけぬける
「あの 孤独な人たちは いったい どこへ 行くのだろう」
何億光年も はるか むかし
そこにあった 蒼い星の どこかの交差点で
歩行者信号が 赤に 変わる
間隙に はみ出した人たちは ちりぢり ばらばらになって
いったい どこへ 行ったのか
けれども はるか遠い どこかの星で
何億年も むかしの映像を 見る その 誰かは
ちりぢり ばらばらな 人たちの
数えきれない 顔や声 思いや言葉が描く
天の川を 読み解こうとしている
あの 詩(うた)が きこえる
誰かが 名もなく 葬られても
誰も 救われるものは なくとも
「ごらんよ あの 孤独な人たちを」
あの 詩(うた)が きこえる
ときをこえて
はるか 何億年 何億光年 かなたまで