少し 前まで は
いくばくかの 静寂があった
たとえば
信号が 変わる 瞬間
「まて」 が 「すすめ」 に変わる 一瞬
それが いまでは
それは 彼岸 のものか
それとも 此岸 のものか
あるいは 無意識に のぞき見る
自らの 深淵から 響くものか
あらゆる声 という声 が
あらゆる目 という目 が
この胸に 乱雑に 塗りたくられる
街じゅうの 世界じゅうの
音 という音
色 という色 が
この胸を 乱雑に 切りつける
目を 覆うに
この手は 小さすぎ
耳を 塞ぐには
遅すぎて
画のなかに
表情(かお)も 変えず
ただ 立ち尽くす
退廃 芸術