Pavlov dog
むきだしになった 唾液腺が
呪わしく 狂おしく
反応する
その あらわで あからさまな
欲望と 渇望は
見世物小屋の どんな見世物よりも
奇異で あわれで 真実で
いま 鳴るか いつ 鳴るか
主人がならす ベルの音を
かたずを飲んで 待っているのは
牡蠣 のような 耳 でもなく
胡桃 のような 脳 でもなく
ただの 機械 が 見る
むきだしになった 唾液腺が
だらしなく 垂れ流す 液体も
装置につながれ
自由も 不自由も
与えられたものは 何もないと 知りもせず
両の眼から とめどなく あふれ出る 液体も
歪んだ水鏡しか つくり出さない
自らの 姿を
正しく 見ることさえ かなわない
条件次第の 夢と 幻に 包まれた
水に 眠る
わが身
変わっても 終わっても
わが身
欲望 その化身にすぎないという
無垢の 罪
知ることさえ ついに なく