幼い きみは たどたどしく
二本の 足で 歩いていく
草原で すっくと立った あの日から
ヒトは 大地と はなればなれになった
その 運命を
小さな からだは もう 知ってる
伸びたつる草も
生い茂る緑の とがった葉っぱさえ
まだ 脅威だ というのに
小さいきょうだいを 抱いて
先を いく 母
きみは どんどん どんどん 遅れてく
母に ふりかえってほしくて
あの あたたかい手と胸を
もう一度
自分だけのものに したくて
傘の先で 濡れた土を つついて 歩く
嫉妬に ひねくれ 強がっている
必死に あらがい たたかっている
でも
いったい 何と?
ツバメの 親には
巣で待つ 子どもに エサをはこぶ 翼がある
巣立ちの日
大きくなった 子どもには 窮屈になった巣を
こわしてくれる くちばしも ある
さあ これからは 空が お家
なんでも
自分で さがして 飛んでおゆき と
優しく ゆびさす
最後の メッセージ
けれど
翼もなければ くちばしもない
よわよわしい ヒトは
ただひらすらに 真っすぐ すすもうとしては
迷宮に 迷い込む
両手に あまるほど あるのは
孤独と さびしさ だけ で
帰る家も 自分のものも
なんにも ない
未だ 見ぬもの
きみの 未来
飛んで いける
不安と 自由の 空は
いつか どこかで
みつかるの だろうか