逢魔時
生者と 死者が 行き交う
その刻
闇の 重さに ねじ伏せられて
太陽は 決して 明日を 約束しない
「金色(こんじき)の麦
この胸 いっぱいに
積んだら 帰ろう」 と
それが ただの書割だと 気づく頃には
もう 遅い
頭上に 迫る 黒雲と 稲光
カラスの群れが
最後の光を 引きつれて
黒い森へ 消えていく
おしえてほしい
ここは どこなのか
たずねようにも
足をとめる 人もなく
たずねられたくもない のか
あるいは
たずねられても 答えられない のか
誰も 何も 知らない のか
闇の世界で
カラスは 決して 地に降りない
それは
あらゆるものを のみ尽くしても あまりある
闇の深さを 知るゆえか
おしえてほしい
わたしは 誰 なのか
生者か 死者か
まぼろし か
たずねようにも
あたりは すでに しんとして
小夜啼鳥が 鳴く ばかり