他人の星

déraciné

「息を して」

 

       熱く 冷たい 砂浜を

       ただ ひたすらに かけていく

       足を とられ

       息を 切らし

 

       高く 深い 砂丘

       ただ ひたすらに もがきつづける

       のぼっているのか 落ちているのか

       わからずに

 

        「こころ」「からだ」「たましい」

       呼び名など どうでもいい

 

       ただ

       あなたの その頬に

       脈打つ 血の 鼓動に

       ふれたい

 

       その 一心で

 

       深く うずめられた

       かすかな 息の あたたかさ だけを

       たよりに

 

       落とした涙も 足あとも

       砂と 風が

       一瞬にして

       吹き飛ばして しまう

 

       時の砂の 呪縛から

       あなたを 掘り出し

       けんめいに 砂を払う

 

       どうか わたしと

       生きて

       息を して

 

 

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