他人の星

déraciné

「メンドクサイ」

 

 

 

       「ねぇ めんどうに なったんでしょ あたしのこと

       あたしだって あたしのこと めんどくさい もの」

 

        けだるそうに 目をほそめ むくれて

       窓のそと 行き交う人を

       見るともなしに 見ている きみの

       白い 頬が まぶしい

       斜陽の いたずら

 

       「だから もう いいじゃない」

 

       何が 「いい」 んだ

       おわり ジ・エンド ってことか

 

       ほんとうは いつも 口も開かず “助けて”と

       言ってる くせに

 

 

       ああ そうだよ

       めんどくさいね

 

       窓のそと 通り過ぎてく

       ばらばらの たくさんの人も

 

       気づかずに すむはずの

       窓ガラスについた 手あかや 汚れが

       光のせいで 目立つのも

 

       あと少し 残った 

       苦くて 冷たい コーヒーも

 

       みんな みんな めんどうだ

 

       どこか 山奥へ行って

       ぜんぶ ぜんぶ ぼくごと 投げ捨ててしまえたら

       どんなに いいだろう

 

       なのに

 

       ふところに 飛び込んできた 

       ぴーぴー 鳴く 小鳥の

       生きものの ぬくもりに すがっていたい

       ぼくが いちばん めんどうだ

 

       どうせ 死んで しまうのに

       淋しいままで いたくない

       こわがりで 淋しがりな

       ぼくが いちばん めんどうだ

 

       すんでの ところで ぼくを ひきとめる

       ぼくが いちばん めんどうだ

 

 

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