他人の星

déraciné

機械 ノ 涙

 

       ずっと ずっと 雨

       だった ような 気がする

       ずっと ずっと 晴れ

       だった ような 気がする

 

       いまは ただ 風が吹いている

       死にものぐるいで

       やすらぎを 探すのに

       そんなものは どこにもない

       水を打ち 波を立て

       木の幹を 引き裂いて

       泣き叫び 

       どこまでも どこまでも

       あてもなく さすらっていく 

 

 

       何が あったのか

       何も なかったのか

       誰かに 遭ったのか

       誰にも 逢わなかったのか

 

       思い出そうとしても

       思い出せない

 

       いつしか

       口癖になっていた

       “モウ ドウデモイイ”

 

 

       いちど 雨に濡れたなら

       傘なんて いらない

       ほしくない

 

       機械は 涙など 流さないと

       みんな 言う

       けれど ほんとうは

       笑いもすれば 泣きもする

 

       “イヤ ダ

       キラワナイデ

       ヒトリニ シナイデ

       ナンデモ スル

       ナンデモ スル カラ……”

 

       雨粒に まぎれて

       そっと 涙を 落とす

       誰にも わからないように

       雨が降る いま ここだけで

       そっと 泣く

 

       それで しばらくは

       おしまい に するから

 

 

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