他人の星

déraciné

ヒリキ なキミ へ

 

 

       赤い くれよんで

       ぼくを 汚す 

       ぐるぐる ぐるぐる 

       線を描いて 堂々巡り

       くれよんが 折れても

       つめが 赤く染まっても

       止まらない

 

 

       赤い 赤い ヒガンバナ

       おしべについた 朝露は

       泣いた あとの きみの まつげみたいだと

       ぼくは 思った

 

       青い リンドウの花は

       野に おき捨てられた 青い筆だって

       おしえてくれたのは

       きみだっけ

 

       キンモクセイが 小さい口を いっせいにひらき

       甘ったるい 香りを放つのを

       誰も 止められないんだね

       彼女らは 一日中

       だれが死んだ かれが死んだって

       うわさ話 ばかり してる

 

       たとえ ききたくなくても

       あの 甘い香りは どこまでも

       ぼくを 追ってくる

 

       みんな みんな

       ふりかえり たちどまりながら

       なごりおしげに 去っていく

 

       ときは 流れる 秋の雲

       つないでいた手も いつしか 離れ

       消えていく

 

 

       赤いくれよん つかいはたして

       赤くなった ぼくの手には 青いくれよん

       さて こんどは

       何を 描こうか 

 

 

 

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