他人の星

déraciné

 

 

       「忘れてた くせに 忘れてた くせに」 と

       桜が つぶやく

 

       太陽が しらじらと光る ハレーション

       涙で くもった 視界の ように

 

       音も せずに さらさらと

       風に 引きちぎられた 花の雨

 

       きみの 髪

       おきざりに された

       花びら ひとつ

 

 

       「忘れてた くせに 忘れてた くせに」と

       枯れた つたが

       身を ふるわせ つぶやく

       だのに ぼくは なぜ 恋人を 待つのか と

 

       やがて 萌えいづる 新緑に

       うずもれ 消えゆく

       細くて かたい 痩せた いのち

 

 

       春の宵

       はらはらと こぼれ落ちる

       涙は ぼんやり

       春霞

 

       うすくれないは 

       誰の 想いか

       花曇り

 

       ゆるやかに あたたかな

       街灯 ひとり あおぎみて

 

       何かが 誰かを

       誰かが 何かを

       おきざりにして 忘れたら

       思い出す ことも ない

 

       「忘れてた くせに 忘れてた くせに」

 

       うらみごと それすら 忘れて

       立ちすくむ

 

       誰か 誰か

       わたしの 手をとる ものは いないか

 

       この さびしい 春の 夕べに