他人の星

déraciné

キレイハキタナイ キタナイハキレイ

 

 

        目を 伏せて ずっと

        下を 向いて 歩いて いたら

        いつの間にか 季節は うつり

        イチョウは 黄色に

        メタセコイアは 赤茶色に

        ツタは 紅色に 染まって いた

 

        咲き つくした コスモスは 

        背丈が 伸びすぎて 道に倒れ

        小さい 真っ赤な花を たくさんつけた キクは

        みんな して こっちを 見てる

        なんだか 怒っている みたいに

 

        慢性 憤怒 状態

 

 

        ふと 気がつくと

        少女が こちらを にらんでいた

        わたしは 驚いて 口もきけなかった けれど

        心のなかは 騒然 ざわざわ していた

 

        「ねぇ どうしたの わたしのどこがへん? 

        あなたと わたしで 何が そんなに 違うの?

        どうして そんなに にらんで いるの?」

 

        少し してから やっと 気づいた

        少女は

        背筋を しゃんと 伸ばして 歩く 父母に

        そう 彼女の 神々に

        とても とても 大切そうに

        守られて 歩いていた

 

        そっか

        わたしが ますく してないから だったんだね

        あなたは あなたのカミサマから きっと

        正しさを おしえられ

        いま その 正しくなさを わたしに 見たから

        あなたは にらむことで

        わたしを 罰したんだね

 

        「ねぇ」

        わたしは 少女の 後ろ姿に

        心のなかで 話しかけた

 

        口を ふさぐものは

        ますく だけじゃない

        ますく なら 指先で はずせる けれど

        てごわいのは 

        ただしさが 心の扉に

        とてもしっかりした 頑丈な 鍵を かけてしまう こと 

 

        その 鍵 ばかりは

        指先 とか 小手先では

        なかなか はずれない かも しれない ね