他人の星

déraciné

レクイエム

 

 

        生きること は 世界 への

        誰か

        たった ひとり への

        絶望的な 片想いに 似て

 

        眠れば 重い なまり色の 夢を見て

        起きれば 虚しい 灰色の 朝を見る

 

 

        きらきら 光る 水面 すれすれに

        あなたは まっすぐ 飛んでいく

        水は 喜び しぶきを あげて

        うたい おどる

 

        わたしは 急いで あなたを 追う

 

        かなしみを かなしみで ぬぐい

        憎しみを 憎しみで ぬぐい

        愛を 愛で ぬぐえども

 

        この手は あなたに とどかない

 

        胸を刺す 氷の かけら

        その 鋭い 痛みに

        わたしには はじめから

        翼など なかったことを

        思い出す

 

        どんなに 声を からして 叫んでも

        どんなに あなたの 名を 呼んでも

        

        あなたの 耳には 決して とどかない

 

        わたしは 水の 反映 ですら なく

        ただの ゆめ まぼろし だった と

 

 

        たった ひとりの 凍てつく 夜に

        薄笑いを浮かべる 下弦の月

 

        せめて

 

        この 亡きがらの 胸に

        青い ガラスの 花束を

        愛 の かわりに

        抱きしめ させて