他人の星

déraciné

Sentimental journey

 

 

        人生は 旅 だと いう

 

        旅は いつも

        ものがなしくて さびしい

 

        行けば 帰らねば ならず

        かならず 終わりが おとずれる

 

 

        青空 さえ のぞけば

        真昼の 白い 月が

        どこまでも ついてくる

 

        ほんの一時 何もかも 忘れ

        はしゃいでも

 

        ふと 気づけば

        あの月が わたしを 見ている

 

        わたしは ほんとうは

        どの景色のなかにも いないのだ と

 

        ああ わかっていたよ そんな ことは

        とっくに ね

 

 

        高い 空を めざして 飛ぶ

        イカロスの ように

        己れの 翼を 溶かす 太陽が こわい と

        怯えながら そびえる 高層ビルの群れ

 

        くらくらと めまいを 感じる

 

        むかし

        スクラップブックに 貼り付けて

        ずっと 忘れていた 紙の かたまりが

        突如として

        ぬっと 現れ出た ような

        グロテスク 

 

 

        何かを 思い出すことは

        どんな 現実よりも

        生々しくて 痛い

 

        終わりのない はじまりを

        現在進行形の 思い出を

        いつまでも いつまでも 生きていたくて

 

        旅寝の 枕に

        落とす 涙

 

 

        自分の 足音を ききながら 考える

 

        いったい 今まで どれほど 嘘を ついたのか

        したい と したくない の あいだ

        葛藤を 瞬間冷却して

 

        たしかに 分岐していた道を 

        その道しか なかったかのように 

 

        何のために ここまで 来たのか

        何も わからず 帰途につく

 

        暗いトンネル

        いくつも 越えて