他人の星

déraciné

Cry baby cry

 

 

       赤ちゃん お泣きよ

       今のうちに たんまりと

 

       大地が 裂けて 風が うなる

       火柱が あがり 水が 逆巻く ように 

       おおいに 嘆いておくが いいさ

 

       この世は 不快な こと だらけ

       この世は なんと 愉快で 滑稽なまでに

       不愉快さに 満ちている こと か 

 

 

       いま きみだけに

       黒い 小さな 魔術師が

       そっと 耳打ち する

 

       この世に 魔法など ありは しない

       あったとしても

       いずれ きみの目には 見えなくなる

       きみは むりやり

       「おとな」 ってものに

       させ られ る

 

       魔法も 秘密も 真実も

       みんなして よって たかって 

       きみの目から うばってしまうのさ

 

       きみは とくべつな 存在だ とか

       きみは ひとりじゃ ない とか

       真っ赤な ウソ を

       きみが 信じて しまうように

 

 

       たった ひとり きみは 歩く

       光を うばわれた 盲(めしい) の 目で

       しばられて 自由にならない 手と 足で

 

 

       いずれ すぐ 

       きみは

       身を あずけられる

       大きな 時間を 喪う

 

       いずれ すぐ

       きみは

       身を 投げ出せる

       大きな 空間を 喪う

        

 

       だから ね

       いまのうちに

       たっぷり たんまり

       泣いておくが いい

 

       この世の はじめで

       この世の 果て

       夢の あとで

       破滅の きざしの

       その まえ に