他人の星

déraciné

消息不明

 

 

 

        土曜日に 液体で発見された あたしは

        火曜日まで 戻らなかった

 

        金曜日には よどんだ沼の ほとりで

        死体袋のまま 横たわり

        列車が 轢いていった

 

        月曜日に 気体となって ふわり

        忽然と 消えた あたしは

        夜半過ぎ 扉を たたいた

 

        「ウシロ ノ 正面 ダレ ダ」

 

 

        日曜日 ベッドの上で 

        固体となって 発見された あたしは

        自分の 名すら もたなくて

 

        ただ ひたすらに

        雷雨だけ を 待っていた

 

        溶けて 流れた その先は

        さいごの 希望を つなぐ けれど

 

        新聞の 活字の 切り貼り みたいに

        みんな ばらばら 

        不均衡を かろうじて 保つ

 

        水に 濡れて 並べられた

        あたしの 切れ端は

        なめくじ みたいに 不完全 復活

  

        赤黒い みみず みたいな 血の筋が

        欄干から 垂れて のぞいてる

 

        水曜日の 夜明け まで

        もちつ もたれつ 

        放たれるか 縛られるか

 

        消息 不明