他人の星

déraciné

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『葛城事件』(3) ※ネタバレあり

「一家団欒」の幻想 この映画では、家族の食事風景がよく出てきますが、それは、手料理を皆で食べながら、和気藹々と話をする、“一家団欒”の図ではなく、それぞれ一人ずつ、別々の時間に、別々の場所で、コンビニの弁当をつつく、“孤食”です。 例外的には、…

『葛城事件』(2) ※ネタバレあり

家庭内殺人、一人目の犠牲者 葛城家の過去の回想で、この家族の、おそらくもっとも「幸せ」だったであろう時代の場面が描かれます。 父・清は、「家」を建て、一国一城の主となり、息子たちが生まれた記念に木を植えたと、家に招いた近所の友人たちに、誇ら…

『葛城事件』(1) ※ネタバレあり

「残酷なおとぎ話」 かなりきつい内容だ、といううわさを、何となく耳にしつつ、でも、いずれきっと観ようと思っていた作品でした。 この映画を観て、この「家族」を見て、どう感じるかは、当然、自分が育ってきた家族、そこから得た家族像が影響することで…

沈黙

なぜ 神は 黙って いるの だろうか おそろしい 嵐に ただ その身をまかせ 葉という 葉が 散り 枝という 枝が 折れ 脈打つ 命が 根こそぎ 失われた としても 神は まるで 知らない 顔だ にんげんが いったい 何を 考えているのか いったい 何を なそうとして…

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2) ※ネタバレあり

乗り越えられることと、乗り越えられないこと やがて、リーの、その街での過去が明らかになります。 リーと、その妻、ランディの間には、まだ幼い3人の子どもがいたのですが、家が火事になり、3人とも焼け死んでしまったのです。 火事の直前、リーは、たく…

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(1)※ネタバレあり

何か面白そうな映画はないかと、youtubeで予告編を見ていて、気になったのが、本作でした。 「面白い」映画、というのは、私にとって、たとえば、こんな感じです。 ①何もかも忘れて、お腹を抱えて笑える映画 ②静かな痛みを、胸にのこす映画 ③驚愕とともに、…

「わたし」

目覚めが おとずれる その ほんの少し前 あたまの どこか 胸の どこか とにかく 耳もと が やたら さわがしくなる ほら 起きるよ 起きてしまうから はやく しっぽを ひっこめて 「しっぽ」 って きっと 「糸」 のことだ と まだ半分 夢のなかで思う 主人が …

『ウィンド・リバー』(2)※ネタバレあり

現実の痛みに満ちた映画 私が、この映画の世界を、「現実世界と地続きの悪夢」だと感じたのは、物語が、事実に則してつくられているからではありません。 「ネイティブアメリカンと白人の間」だけの問題ではないからです。 人間のいるところなら、世界中どこ…

『ウィンド・リバー』(1)※ネタバレあり

“草原がなびく 私の理想郷 風が木の枝を揺らし 水面がきらめく 孤高の巨木は 優しい影で世界を包む 私は このゆりかごで あなたの記憶を守る あなたの瞳が遠く 現実に凍えそうな時 私はここに戻って目を閉じ あなたを知った喜びで 生き返るの” 映画の冒頭に…