2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧
むかしむかし、ある国に、それはそれは愛らしい女の赤ちゃんが二人、誕生しました。それは、色とりどりの花が咲きほこる、いちばん美しい季節のことでした。 二人の女の赤ちゃんは、奇しくも同じ日、同じ時刻に生まれ、その顔は、瓜二つでしたが、もちろん、…
さあ 出てゆこう 太古の海を からだも こころも なるべく 汚して できるだけ 台無しに あとかたもなく 破壊するために からだを レールに縛りつけ よどんだ空気を 胸いっぱい 吸い込んだら 真珠の涙も 澄んだかなしみも 逃げていく 彼らには その場所ではな…
あるものを、「好きだ」とか、「嫌いだ」とかいうのは、単なる好みの問題や、感情判断であって、それ以上のものでも、それ以下のものでもなく、快不快もまた同様です。 つまり、善や悪などの絶対的価値判断とは分けて考えられるべきものです。 ところが、そ…
「生き甲斐を求めようとする人たちは、自分が、自分の周囲の世界に、なんとかして、受けいれてもらいたいと思っているのです。つまり、自分たちは、現在、この世界から、しめ出されていると感じている。」 なだいなだ『人間、この非人間的なもの』ちくま文庫…
「いったいみなさんは、人間の本性に利己主義的な悪が関与していることを否定する義務を感じなければならぬほど、上司や同僚から親切にされたり、敵に義侠心を見出したり、周囲からねたまれずにいたりしているのでしょうか。」 フロイト 精神分析入門(上) 新…
偶然に 偶然を 積み木のように重ね 生まれて 生きる 自意識をもった 物体を どんな言葉で讃えようと どんな言葉で貶めようと いずれ 等しく 流れ去る 時の砂 存在したかどうかなど 神でさえも きっと 知りはしない おかしなものだ 人智を越えた存在を 人は …
「だって バラのやつ あんまり 高慢だから」 もし ぼくが 星の王子さまなら こう言うだろう 「だから 水を やるふりして 風から 守るふりして あいつの首 絞めてやったんだ バラのやつ まさか そんな目に遭うとも思わず 最後まで 高慢ちき だったよ」 けれど…
娘は、自分を誘ってくれた王子の気持ちに感謝しつつ、馬に乗り、王子の後ろに従っ て、雨あがりの森へ行くことにしました。 森の中は、この上なく美しい輝きに満ちていました。 長雨に洗われた木々も、草花も、ふくいくとした香りに満ちて、黒々とした木々の…
翌日の晩、遅くなってから、王子は、こっそりと、家来を呼んで、言いました。 「あの鼻つまみものの女を、殺してくれ。」 家来は、その言葉に真っ青になって、言いました。 「何をおっしゃいます、王子さま。すみれや鳥ならばともかく、相手は人間、殺せば罪…
やがて、三年の月日が流れ、娘も王子も、ともに、十八の年を迎えました。 国をあげての、盛大なお祭りのような婚礼の儀式には、とっておきの海の幸や山の幸、めずらしい料理がテーブル狭しとならべられ、陽気なかけ声や笑い声とともに、何十杯も、何百杯もの…
娘は、町にいる間、本当にたくさんのことを、見たり、聞いたりしました。 たとえば、赤子が産まれるのを見る機会には、三度ほど、遭遇しました。この世に生を受け、祝福された赤ん坊は、金の竪琴をふるわせるように、笑いました。そのとき、娘は、この世はな…
そんな王子も、やがて十五になり、まわりのものたちは、方々に、おふれや使いを出して、王子にふさわしい結婚相手をさがしはじめました。そのうわさを聞きつけたものは、王子が望むと望まないとにかかわらず、美しい女を、王子のもとへ送り込んできました。 …
さて、自分の言いつけどおりに、すみれを処分させたものの、王子は、何となく面白くないような、退屈で、不機嫌な気持ちで、日々をやりすごしていました。するとそこに、またもや、珍しい贈りものが異国の地から届けられました。 それは、とても美しい声で歌…
むかしむかし、大きな国の、立派なお城に、一人の王子がおりました。 王子は、生まれてこの方、自ら望む、ということがありませんでした。なぜなら、王子が何かを望む前に、まわりの者たちが、王子に喜ばれそうなものをみつけては、すすんで献上したからです…
クリムトの、『接吻』、という絵も好きです。 きれいな絵だと思っていて、パズルになっているのを見かけたので、購入しました。(アウトレット価格でした)。 2000ピース以上ありましたが、パズル好きだし、何とかなるだろう、と軽い気持ちだったのですが、と…
日が昇る 夕べの 涙は ぬぐったね 食事を がそりんを からだを 満タンにして エンジンかけて 走っていくんだ ボディは みがいた キズ ひとつなく くもり ひとつなく 新品みたいに 見えるかな ナンバープレートは 承認のあかし なくしたりしたら 大変だ ほん…
エッシャーの、「相対性」という絵が好きです。 私は、美術の知識をほとんど持ち合わせておらず、パートナーと美術館に出かけても、いつも私の方が先に見終わってしまいます。 すぐに飽きて、退屈してしまうのです。 子どもみたいだと言われました。自分でも…
はたらき疲れた おとなのように 小さい漁船が 眠りにつく ゆりかごのように ゆらす波 暮れる光は 天蓋つきの カーテン 遠い山に 沈む一瞬 最後の陽光の まぶしさに ここが 私の故郷でないことを 思い出す ここは 故郷から 西へ 西へ 空を渡ってたどりついた …
「恋愛。好色の念を文化的に新しく言いつくろいしもの。すなわち、性慾衝動に基づく男女間の激情。具体的には、一個または数個の異性と一体になろうとあがく特殊なる性的煩悶。色慾のWarming-upとでも称すべきか。」 「『きれいなお月さまだわねぇ。』なんて…
昼の公園と 夜の公園は 別ものだ 昼間の公園は 子どもたちのもの ブランコも 回旋塔も お砂場も 腕を広げて 子どもたちを待っている 「遠くへ行ってはだめ」 「知らない人に ついていってはだめ」 親の言葉が 子どもを囲う ブランコも 回旋塔も お砂場も 子…
家の近くに、「よっこらしょ」、と鳴くカラスがいます。 日によって、すぐそばだったり、少し遠くだったりするのですが、たしかに、「よっこらしょ」、あるいは、「よっこらこらしょ」、と鳴いているのです。 はじめてその声をきいたときには、思わずパート…
「眠りの生物学的な意向は休養であり、心理学的な性格は現実世界への関心の中断であるようにみえます。われわれがいやいやながら生れてきたこの世界に対するわれわれの関係は、中断の時がなくては維持しきれないもののようです」 フロイト著 高橋義孝他訳『…