他人の星

déraciné

「わたし」

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        目覚めが おとずれる

       その ほんの少し前

       あたまの どこか

       胸の どこか

       とにかく

       耳もと が

       やたら さわがしくなる

 

       ほら

       起きるよ

       起きてしまうから

       はやく

       しっぽを ひっこめて

 

       「しっぽ」 って

       きっと

       「糸」 のことだ と

       まだ半分 夢のなかで思う

 

       主人が ねむりにつくと

       すぐさま 作業にとりかかる

       靴屋の こびと みたいな

       そういう 一群れが いる

 

       さあ

       きょうの こまぎれを

       ぜんぶ ここへもってきて

       糸で つなぎあわせるよ

       目が 覚めたとき

       くれぐれも

       不自然の ないようにね

 

       作業の 手順を たしかめて

       つなげるべき ところを 間違わないで

 

       そうして

       何も 知らないうちに

       あしたの 「わたし」が できあがる

       きのう までの 「わたし」と

       ぜんぶ ぜんぶ 

       器用に

       糸で つながれて

 

       目覚めたとき

       わたしは

       平気で 平然と

       「わたし」 のつもりで

       動きだす

 

       わたしは

       どうして 「わたし」 なのか

       まったく

       何も 知らないのに

       さっぱり

       わけも わからないのに