胸いっぱいの 愛を
風が吹く夜
彼は ひとり
空き地で ボールを 蹴っている
ほんとうは 小さい彼を
街灯のあかりが
大人のように 大きくする
昼間の光の下にも 彼はいて
こっそりと
風が揺らす 枝葉の木陰で
うかれ 遊び
ひっそりと
いじわるな 皮肉を言っては
くすくす 笑う
「ね きみは 知らないだろう
たすかるために おぼれるってこと」
しんとした 夜の真ん中で
いまも
ボールを蹴る音が きこえる
音だけを あとに残して 飛んでいく
夜更けの ジェット機のように
どこか かなしく せつなく
街灯の下の 長い影
彼は 遊び うかれ
皮肉を言って くすくす 笑う
どんな光も 及ばない
果てなく広い 闇の すみっこで