日暮らし
でこぼこした 熱い アスファルト
とおり雨が 残した
気まぐれな 水たまり
泥水の 上にも
まぶしい 太陽が 反射して
直視 することは できない
ヒグラシが 鳴く
晩夏の 夕暮れ
落ちくぼんだ 道端に
からからに なって 上向いた
ブローチみたいに 完璧な
セミの死骸が 落ちている
のども 裂けよ
からだも 裂けよ と
一生を 恋に鳴き
さいごには
泣いたのか 笑ったのか
どんなに苦しく 狂おしい 想いも
何の 痕跡も 残さずに
手の上の 死骸は
あまりに かるく
わたしは どこかで
また いつもの
偽善者じみた 願かけを する
セミの 死骸を すずしい葉陰の
土の上に おきながら
どうか せめて
ひとかけらの 罪の つぐないに
なりますように と
セミの 死骸は ほかにも
落ちては いないだろうか
さがして 歩く
ひとりきりの わたしを
陽の名残りが 見ている
いつか 同じ
かるい死骸になる
わたしの 背中を