わたしは 太陽の 顔を 知らない
かたち あるものは すべて
おわりを迎える 秋の 歩道に
色あせた 落ち葉も
蝶の 羽の かけらも
雨に濡れて へばりついている
わたしには それが
深い もっと深い 谷底まで 落ちていかないように
けんめいに しがみつく
さいごの 力に 見えて
気の遠くなるほど むかしから
ずっと 変わらず 生きている
メタセコイアの ひと枝に
ひと夏を 命の限り 鳴いていた
セミは とうに
永遠の 空へ 飛び立った というのに
そのぬけがらは いまも 変わらず
へばりついている
過去だけは 過去だけは
消えようもないし 変えようがないのだ
とでも いう ように
わたしは 太陽の 顔を 知らない
目をつぶすほど
まぶしくて
直視できない
この世界の 真実の 素顔を
何も 知らぬまま
死んでいかなければならない というのだろうか
すべて 水の泡 というものが 例外なく
水泡に帰す 運命に ある よう に