他人の星

déraciné

双頭の 蛇 

 

 

        何もかも 気に入らない

        ナニモカモ キニイラナイ

 

        何だって?

        何かが おまえの お気に召すようになるとでも?

 

        何もかも 思いどおりにならぬ

        ナニモカモ オモイドオリニナラヌ

 

        何だって?

        何かが おまえの 思いどおりになるとでも?

 

        無数の あざけり笑いが 不気味な地響きのように

        千里先まで 立ちはだかる

 

 

        雨にあらわれ 澄みきった 青い空を 見た日

        「世界ハ 愛スルニ 足ル」と思った

        ああ ほんの少し ほんの少しでいいから

        ひだまりで この 冷たいからだを あたためたい

        と思った 次の瞬間

        おまえは すかさず わたしの 頭を かみ砕いた

 

 

        馬鹿だね おまえ

        分もわきまえず 陽のしたまで のこのこ 出ていって

        その醜さを あたりにさらす気かい

 

        「光も 熱も 優しさもない 冷たい夜に

        ただ すこし なぐさめが欲しかっただけ」だって?

 

        偽りを 言うのじゃないよ

        いったい 何が ほしいのさ

        イッタイ ナニガ ホシイノサ

        言ってみたまえ

        うす汚いヤツめ

 

 

        木にのぼろうとしては 引きずりおろされ

        川に入ろうとしては 岸に戻され 

        南へ 向かおうとすれば 北へ

        東へ 向かおうとすれば 西へ

 

        どちらが 前で どちらが 後ろか

        しまいに 互いの罵声で 何も 聞こえなくなる

        「わたしが 前へ 進もうとするのに

        おまえが 後ろへ 戻ろうとする」

        「ワタシガ 前ヘ 進モウトスルノニ

        オマエガ 後ロヘ 戻ロウトスル」

 

 

        ああ 動けない 動かない

        アア 動ケナイ 動カナイ

        今日も このまま 日が暮れる