熱
鈍色の まぶたの 間 から
線香花火 のような 太陽 が
顔を 出す
黄色く 濁った そのひとみは
わたし あるいは ほかの誰かが 死んでも
いちべつも くれは しない
みずからの 重みと 熱と まぶしさ に
せいいっぱい だから
風が どこから か
甘い 花のかおりを はこんでくる
わたしの 庭には 花など 咲かない
この花 は
誰でも ない 何ものでも ない わたし が
そのにおいに 叶わぬ夢を かさねて
むせび 泣いている など とは
思いも しない だろう
じりじり として ぼんやり とした
盲目の 太陽に 焼かれる まま
ただ 横たわる
わたしの からだの 上を
時間だけ が
列車の ように 走って いく
そうして いずれ は
轢死を 遂げる だけ なのだ
誰 にも 何 にも 見られず に
散って 踏まれて
くしゃくしゃに なった
夏のさかり の
あかい あかい
さるすべり のよう に