他人の星

déraciné

砂の城

 

 

       いつも 思う

       どうして もっと 波打ち際から 離れた場所に

       つくらなかった だろう と

 

       潮が満ちれば  

       あとかたもなく 持ち去られる

       そんな場所に 

       どうして いつも

       つくって しまうのだろう と

 

       頑丈な砦と 城壁

       高い塔も

 

       すぐに 潮は満ちて

       あとかたもなく ねこそぎ もち去られる

 

       ふれようとする そばから くずれて

       消えて なくなる

 

 

       ひとの 心は まるで 砂の城のよう

       ふれようとする そばから くずれて

       まぼろしのように 消えて なくなる

 

       ならば

 

       このわたしも また おなじ

       波打ち際 刹那の 砂の城

 

       一瞬のまぼろしの あなたに ふれてみたくても

       一瞬のまぼろしの わたしに ふれてほしくても

 

       時の波が ぜんぶ もっていってしまう

 

       あの ひどく残酷で ひどく寛容な

       遠い 海に

 

       塩辛い涙を どれだけ 流して

       どれほど 海を思った だろうか

 

       ああ どうすれば どうすれば

       たしかに この手にふれる 何ものかを

       みつけることが できるのだろう と 

 

 

 

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