遺書
遺書を書いて
それから つかの間
この世に 顔を出して
振り返れば
水が一滴 落ちる間 くらいに
とても 短く
けれども あの太陽に
じりじりと 照りつけられれば
永遠のように 長く
雨の夜には 雨音が
こっちへ こっちへと
とても 易しく 道筋を つけるから
とても 優しく てまねきするから
ふとんから 出て
冷たい 床に 足をおろし
思わず ついて いきたくなるのを
どれだけ こらえたことだろう
帰りついたら きっと
何より 先に
あの 遺書を
あれから 少ししか たっていないのに
いまは もう
何を 書き残してきたか
すっかり 忘れてしまった
あの遺書を
まず最初に 読み返すことに なるのだろう