他人の星

déraciné

涙の お池

 

 

       おなかが すいた

       ハンプティ・ダンプティ

       小さな お庭の

       塀に 座って

 

       食べもの といえば

       自分の 涙 だけ

 

       くる日も くる日も

       ひっきりなしに 

       泣き続けた ものだから

 

       涙は やがて

       小さな お池に なった

 

       ある朝

       まぶしい 太陽と

       真っ青な 空が

       お池に 映って

 

       ハンプティ・ダンプティは 言った

 

       「ねぇ そっちの世界は

       きっと きっと

       きれいで 美しくて

       楽しいんだろうね

       泣いてばかりで お腹がすく

       こっちよりも

       ずっと ずっと」

 

       見とれて 見ほれて

       ハンプティ・ダンプティ

       お池 めがけて

       ぼちゃん と 落ちた

 

       こわれもの の

       からだは こなごな

 

 

       ハンプティ・ダンプティ

       あっちの世界に

       いけたかな

       いって しあわせに

       なれたかな

 

 

 

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