ぼくは ひとり
誰も 乗っていない 深夜のバスに ゆられている
雨や 風に さらされて
守るべきものも 何も なくなった
破れて 疲れた ビニールハウス みたいに
バスは
闇の中を まっすぐ 走っていく
ねぇ きみは いつも ぴかぴかで
いつも 目的 めがけて
迷わず 走っていくんだね
けれど このぼくに
目的など あった ためしがない
ほんとは どこで 降りても よかったんだ
ほんとは もう 降りたいんだ ここで
きみは バス停から バス停へ
決められた道を 脇目もふらず
まっしぐらに 走っていく
いまでは もう 思い出せない
わからない
ぼくが 来た 道に
バス停 なんて あっただろうか
この 破れた ビニールハウスから
そのうち
胃やら 心臓やら
化けものやら 怪物やら
なんか 出てくるんじゃないかって
不安になる
しょせん
ぼくが
乗っていようが 乗っていまいが
きみには
何の 関係もない のに ね