沈黙
なぜ
神は
黙って いるの だろうか
おそろしい 嵐に
ただ その身をまかせ
葉という 葉が 散り
枝という 枝が 折れ
脈打つ 命が
根こそぎ 失われた としても
神は
まるで 知らない 顔だ
にんげんが
いったい 何を 考えているのか
いったい 何を なそうとしているのか
蟻でも 観察するように
ただ じっと 見ている
それから ?
それから ?
まるで
物語の つづきを せがむ
こどもの ように
全知全能
どころか
無知無能
つまりは
どんな つらい
どんな かなしい
どんな おそろしい
悲劇 だろうと
あるいは
喜劇 だろうと
神 にとっては
ただの 寓話 でしかない
わたしたちは
命がけで
物語を つむぐ
神を
楽しませるために
それでも
神は
いっこうに
満足しない
それどころか
もっと もっと
おもしろい お話を
ご所望 のようだ
誰か 誰か
いないのか
神を
笑い死に させるほど
おもしろがらせる やつは
いないのか
神は
すっかり
退屈している
退屈 だから
どこの どんな こどもより
ずっと ずっと
無邪気に
蟻を
一匹ずつ
残らず
踏みつぶす
それでも
表情一つ
変えずに
相変わらず
まったく
おもしろくも
何ともなさそうに
地面を 見おろしている
何か もっと おもしろいことは
起きないものか と
そればかりを
考えて