2019-10-07 十月の蟬 詩 キンモクセイの 甘ったるい むせかえるような 匂いが 苦しい わかっているよ この香りは ぼくたちの 夏の おわりの 合図 秋の 冷たい爪先が この心臓の さいごの一滴を 搾り取る まで あと すこし 赤い 紅い 秋が 目から 入って 胸から 流れ出す まで あと わずか もう ぼくには 死ぬほど 冷たい 風 だけれど 死ぬほど 凍える 光 だけれど 命を かけて きみに もう 一声の 求愛 を 「あいして いるよ」 「あいして ほしい」 「あいして いたよ」 どこまで きみに 伝えられる だろう か